「もうここから消えたい」と言ってからしばらく経った日の事。
そう、忙しいはずの週末婚鬼雄が今週は週の半分はご在宅。


息が詰まる。


鬼雄の洗濯物は単独かつ時折トイレのスリッパや雑巾類と回される。乾いたあとも、一旦洗剤をくぐり抜けたというのに私は鬼雄のパンツは摘んでしか触れない。
よってクシャクシャのトランクスの出来上がり。


そんな洗濯物や、冷蔵庫の中が汚いだの小声でブツクサ文句を言う鬼雄。


夜、寝る前に廊下で捕まってしまい、マンションの短い廊下で立ち話となる。


「うちの鬼母も何回か家飛び出したことあったなあ。」

遠くを見て語る鬼雄。それがどうした。


「鬼母は円形脱毛症なろうが結局会社も支えて今までやって来た。ま時代が違うから。お前にはわからないだろうけど。」


次から次へ得意げに鬼一家を持ち上げ私を遠回しに下げだした。私は大きなため息を一つ落とし頭の中で数々の反論が繰り広げられる。だが悟ってしまう。

あ、これ言ってもどうせ伝わらない……。言ったら逆上される。

でも私の口は開いていた。



「私は子供いるんだから何とか頑張ろうとしてきた。どこの世界に子供〇人(2人以上4人以下です)も一人で世話して家事して仕事までしてその仕事で家計支える妻居る?その間好きなことだけしてきた癖によく言えるね」


そうだ私は一人の子が夜中に具合悪くなった時も救急車を呼びながら母子手帳と保険証、スマホ財布をスタンバり残りのお子達も救急隊員の計らいで同乗して行ったこともあった。そんな一日一日を鬼雄は知らない。知っててもその場にいなかった自分には何もできないのは当たり前仕方ないだろうと気にもしていないだろう。きっと覚えてもいない。ご都合でいつも記憶喪失の鬼雄であるから。


「俺はババ子の足かせにはなりたくない。だから好きな事をすればいい。また誰かと恋に落ちたりもあるだろう」

はあ?私は浮気した事なんてない……。


もしかして浮気したところを騒ぎ立てて慰謝料と親権を奪う魂胆もあり得そうなんて頭をよぎった。


それに、足かせにとっくになってますけど。存在自体がもはや手枷足枷です。


言わば好き勝手してでもいいから、母親として家事育児は継続し欲を言えばお金も稼いで名ばかり妻を継続しろという提案らしい。


都合が悪くなるとすぐに話の論点をずらしてくる。今回は逆上しなかった。おそらく逆上すれば私がすぐさま子供を連れて出ていくと思ったようだ。


とりあえずもう意味不明なので「寝ます」宣言し自室をぱたりと閉めた。部屋は別々なのです。絶対に無理であるから同室など、リビングに一緒に居る事すらほぼありません。


今はとにかく身を顰め、気づかれないように大事なものを少しずつ実家に送ることにする。


きっとこの人は、人を愛せないのだと思う。
愛されずに育ったのも否めない。だって鬼親だから。


そして私は誰かに頑張ってるね。偉いねって言って欲しかったさみしがり屋でもあるのかもしれない。